医療トピックス

嚥下・ボイスセンター


★嚥下・ボイスセンターとは

 平成29年7月より、新たに「嚥下・ボイスセンター」を開設いたしました。
 嚥下センターは、いわゆる嚥下障害の診断と治療を行う外来です。嚥下とは、食事などを口から胃に送り込む一連の動作を指します。通常は、口に入った食べ物は咀嚼した後にほぼ無意識に飲み込んでいると思いますが、何かしらの障害が生じると上手に飲み込めなくなり、ムセが生じたりします。原因には、神経疾患、腫瘍性疾患、膠原病、老化など様々です。
 飲み込みやノドの違和感でお悩みの方はご相談ください。  ボイスセンターは、いわゆる音声障害の診断と治療を行う外来です。声がかすれる(嗄声)、声が出しにくい、大きな声が出ない、ノドの違和感があるなど、様々な症状に対応して、専門の医師と言語聴覚士が連携して、詳しい問診聴取と、喉頭内視鏡検査、発声機能検査、各種画像検査などから診断し、適切な訓練指導や治療を御提案いたします。
 保育園の先生や教師など日常において声を酷使する方、アナウンサーや歌手などの声を職業とする方などの声に関する悩みや不安をお持ちの方はご相談ください。

 当センターの特徴は、音声改善手術が必要になった場合に、一般的に広く行われている全身麻酔下の喉頭微細手術と局所麻酔下の喉頭内視鏡手術を選択することができる点です。全身麻酔の場合はより繊細な手術操作が可能となりますが約5日間の入院が必要です。全身麻酔下で仰臥位となり、経口腔的に喉頭鏡を挿入し声帯病変を顕微鏡下に観察ししながら手術操作を行います。一方、局所麻酔の場合は、座位で経鼻的に内視鏡を挿入して声帯病変を観察しながら経口腔的に鉗子類を挿入して直接病変を切除する方法です。1泊2日の短期入院としており、お仕事でお忙しい方や小さなお子様がいて長期入院が難しい方などにお勧めです。但し、それぞれの方法には適応がありますので、詳しくは当センターにお問い合わせください。また、音声訓練が必要な方には、医師と言語聴覚士が連携して方針を決定し、声の衛生指導や各種訓練など時間をかけて対応しております。



★受診方法

 毎週水曜日の午前・午後に行っています。近隣の耳鼻咽喉科より紹介状を書いていただき、当院地域連携室予約係を通して直接専門外来を予約することが出来ます。また、先に一般外来を受診していただき、必要に応じて専門外来を予約することもできます。当日の受付は、外来の予約状況によってお受けできない場合もありますのでご注意下さい。



★嚥下障害に対する対応

各種検査と診断:

 「なんとなく飲み込むときにノドに違和感がある」、「食事をすると時々ムセることがある」、「お薬を飲むとノドに引っかかるときがある」などの症状も嚥下障害である可能性があります。喉頭内視鏡を用いて食道入口部の観察や、バリウムなどを用いた嚥下透視検査、頸部CT検査などを行い原因究明します。原因によってその後の治療が変わります。

リハビリテーション:

 嚥下という一連の動作には認知期・準備期・口腔期・咽頭期・食道期があり、それぞれがなめらかに連動しています。どれ1つ欠けても嚥下障害となります。リハビリテーションには、間接訓練(食べ物を用いない)と直接訓練(食べながら)があり、病態によって適宜選択されます。不適切な訓練を行ってしまうと、誤嚥を引き起こし肺炎の原因となりますので十分な知識が求められます。

手術療法:

 手術には、嚥下機能改善手術と誤嚥防止手術があります。一般的に、ある程度は飲み込めるが十分では無い症例には嚥下機能改善手術を、全く飲み込めないか誤嚥性肺炎を繰り返すような症例では誤嚥防止手術を選択します。いずれにしても、最終的には口から十分な食事を摂れるようにして差し上げることが目的となります。病態によっては気管切開が必要になる場合もあります。



★音声障害の代表的疾患と治療法

声帯ポリープ:

 日常的に音声を酷使があったり、風邪を引いたときに声帯に炎症や出血がおきるのが原因でポリープが生じるとされています。症状は嗄声や声が裏返るなどが多くみられます。一側性に生じることが多いです。保存的治療として投薬と吸入療法を行います。改善が乏しい場合は手術で切除します。この場合、全身麻酔でも局所麻酔でも対応が可能です。



小児および成人の声帯結節:

 元気の良い子供や歌手やアナウンサーなどの職業的音声使用者に多くみられ、両側声帯にタコのような硬い隆起性病変が生じる疾患です。症状は嗄声ですが、重症例では全く声が出ない失声となることもあります。治療の基本は声の衛生指導と声を出さないことですが、小児の場合は自然消退が期待できるため過剰な指導は行わず経過観察とします。成人の場合は発声方法の指導を行います。改善がみられなければ切除することがありますが、職業性の場合は再発することが多いです。全身麻酔でも局所麻酔でも対応が可能です。



ポリープ様声帯:

 タバコが原因で声帯がむくんでしまう疾患です。両側に生じることが多いとされています。症状は、声が低くなるや、高い声が出なくなるなどです。治療としては、軽度の場合は禁煙と吸入療法のみで改善することがありますが、中等度~重度の場合は手術が必要になります。基本的には全身麻酔の手術対応となります。重度で呼吸苦を訴えるような場合は窒息の危険性が有り、緊急対応が必要になることがあるので注意が必要です。



声帯萎縮:

 声帯は大きく分けて粘膜・粘膜下組織・声帯筋が存在しますが、このいずれか痩せてしまうのが声帯萎縮です。原因としては、加齢、声帯麻痺、声帯手術後、ステロイド剤の使用などが挙げられます。発声時に声帯間にすき間が生じるため、症状は息漏れする声(気息性嗄声)、長く声が出せない、大きな声が出ないなどです。治療は、痩せた声帯に薬剤を注入して膨らませる手術が中心となります。全身麻酔でも局所麻酔でも対応可能です。


喉頭肉芽腫:

 無理な発声を続けることで不必要な力が声帯に加わった刺激や、炎症などが原因で声帯に肉芽という隆起が生じるとされています。逆流性食道炎も原因となるとされています。無症状であることが多く、胃カメラの際に発見されることが多いです。治療は、保存的に内服薬と吸入療法を行うのが一般的ですが、難治性の場合は悪性腫瘍を否定する意味で切除して病理診断を行うこともあります。比較的再発し易い疾患とされています。全身麻酔でも局所麻酔でも対応可能です。


喉頭蓋嚢胞:

 喉頭蓋というノドの入り口の蓋のような部分に、内部に液が貯留し膨隆した嚢胞が生じます。原因は明らかではありません。無症状であることが多いですが、時に違和感を来すことがあります。また、嚢胞に感染が合併すると、急激に腫脹して窒息する危険性があります。
 治療は、切開して内溶液を排泄する方法や、全部を摘出する方法などがあります。全身麻酔でも局所麻酔でも対応可能です。



反回神経麻痺:

 正常左右の声帯は、呼吸時は開いていて、発声や嚥下時は閉じていますが、何かしらの原因で、いずれか片方もしくは両側の声帯が動かなくなる疾患です。声帯が開きっぱなしになる場合は、息漏れがひどく声が出なくなり、誤嚥を起こしやすくなります。逆に閉じっぱなしになると呼吸が出来ず窒息する危険性があります。麻痺の原因は、甲状腺癌、食道癌、肺がん、動脈瘤、脳疾患など様々です。治療は、開いている声帯を閉じさせる手術や、閉じた声帯を開かせる手術を行います。コラーゲンを注入する方法や喉頭に直接ゴアテックスを挿入する方法、糸で声帯を外方に牽引する方法や声帯をレーザーで切除する方法など、適宜最適な治療を選択します。


痙攣性発声障害:

 発声時に声がふるえる病気で、声が詰まって出なくなることもあります。原因は、神経疾患であるという説や精神的な疾患であるという説など一定のものはありません。音声訓練は無効とされていて、一般的にはボツリヌス毒の声帯注入や甲状軟骨形成手術Ⅱ型が行われています。当科では診断は行いますが、ボツリヌス毒の注入および甲状軟骨形成術Ⅱ型は現在のところ行っておりませんので、手術をご希望の患者様は他院にご紹介させていただいております。


心因性発声障害:

 声帯には何も異常が無いのに心の問題で声が出ない疾患です。耳鼻咽喉科単独の治療では無く、精神科的な治療も必要となります。極度のあがり症で声がふるえる、声が出なくなるなどもこれに該当します。精神的原因の自覚が無いこともあり、時間をかけた診療が必要になりますが、精神的に安定すると元通りの声が出るようになることが多いです。


喉頭および気管狭窄症:

 声門下や頸部気管に狭い部分が生じてしまい、呼吸や発声に影響が出る疾患です。原因は、全身麻酔の手術歴、気道熱傷、薬物刺激、先天性、原因不明の特発性などがあります。呼吸苦を呈する場合には気道確保として気管切開術が必要になることがあります。治療は、狭窄部位の切除と再建を行いますが、長期にわたることもあり再発することも多く、根気強い治療が必要になります。


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